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「ただいま。アレンくん、ちょっとこっち来てくれない?」
「おかえりなさい。どうしたんですかリナリー」
艶やかな黒髪を二つに括り上げた少女の片手の小瓶、その中に透明な、薄紅色をした液体が揺れている。
「ふふ、ちょっと任務先で買ってきたの。」
「何ですか、それ?」
「香水。」
白磁の掌の上でゆらゆら揺れるそれを見つめた、白い髪の少女。
「へぇ・・・」
「そうだ、アレンくん私の部屋に来たらいいわ。他にもいろいろ持ってるの」
腕を引かれてそれを断る訳にも行かず、少年の様な少女は苦笑してそれに続いた。
「・・・コレも同じシリーズなの。さっきのは蒼なんだけど、こっちはピンクなの」
「へぇ、何か不思議ですね」
手を引かれて入った彼女の部屋の棚の中には、ずらりと並んだ香水の瓶があった。
これはこの会社の、これはあの有名な、と次々手に取っては棚に戻していく。
「アレンくんはこう言うの、付けた事ないの?」
「さぁ・・・師匠と居た時は何度かあった気もするんですが、僕こう言うの無頓着なもので」
「ふぅん・・・なら、こう言うの付けてみたらどうかな。アレンくんにきっと合うと思うの」
そう言って取り出したのは、薄くゆらゆらと揺れる薔薇色の香水。
「え、いいのに。」
「駄目よ、こう言うものは付けてると段々なじんで、その内その人の香りになるものなの。」
ほら、と手に握らせようとする彼女に、渋る様にしていると。
「っ、あ!」
ガラス製のそれが滑り、床に落下しかける。
あ、と声をあげ、手を伸ばして捕らえようとしたその時。
ぱしゃん
「ひゃあっ!?」
もともと緩んでいたのか、蓋が外れ中身が零れてしまった。
それも、それを捕らえようとした少女の体・・・もとい、頭に。
「アレンくん、大丈夫!?」
「はい、平気です。でも、香水が・・・」
少女の髪や体に広がってしまったためか、その手袋を嵌めた掌には既に空になった瓶が転がっていた。
「別にいいの。それよりアレンくんこそ、香水頭から被っちゃったし・・・早く洗い流さなきゃ」
とりあえず一度拭いて、と手渡されたタオルを頭にごしごしと押し付ける。
「・・・何か、凄く甘い匂いがする」
「しょうがないよ、香水だもん」
すっかりフードや髪に染み込んでしまった香水を、少し惜しげに見つめる。
「うぁ、髪の毛ピンク色になっちゃった・・・すいません、ちょっとこのままタオル借りて良いですか?後で返しますから」
「良いよ、それ位幾らでも貸してあげるから。それより早くお風呂行かないと、ホントに染み付いちゃうよ!」
部屋を出て、ぐいぐいと風呂へと引っ張っていく彼女に、またも少女は苦笑するしかなかった。
わしゃわしゃ、と頭が泡に包まれる。
先程被った香水の所為か、泡まで薄い薔薇色に染まりつつある。
「どう?色取れた?」
タオルを体に巻いて、横のシャワーを手に取る彼女に、少女は答える。
「だんだん落ちては来るんですけど、どうにもまだ匂いが・・・」
そう言って目の前にあるシャワーを手に取り、コックを捻る。
薄く染まった泡が、体を伝って流れていった。
「結構落ちたな・・・。もうそろそろ良いか」
コックを逆に捻り、シャワーを止める。
「それにしても・・・アレンくんってナイスバディよねェ。」
「狽、わっ!や、止めて下さいリナリー!後ろから胸揉まないで!」
「何よー、この胸はー!ブラとか寄せ上げも無しにこの形じゃないのよ!足だってこんなに細っこいー!ずるいー!」
わきわきとオヤジの様に指を動かして少女が少女の胸を揉む様は、目の薬か目の毒か。
「リナリーだってこんなにキレイな髪じゃないですかー!それに腕も細いしー!」
「どっちもどっち!」
あはは、と笑いながら体を触りあう二人が、周囲からみて微笑ましく映ったのは言うまでも無い。
「・・・・・・・・・・・まだ甘い匂いがする」
くん、と脱衣所で鼻をならして腕を鼻に持っていく。
「まぁ、一瓶浴びちゃったらそうなるよ。・・・でも、流石にきついかもね」
「はぁ・・・どうしよう、こんなんじゃ教団の廊下も歩けないよ。任務なんて行けっこないし」
「その内落ちるよ。大丈夫よ、アレンくんに合う香りだし」
「そんな問題じゃないです・・・はぁ、神田やラビに何て言われるか」
うぅ、とうめき声を漏らす。
この後、意外な事が判明する事も知らずに。
Perfume
甘い匂いを出す食虫植物に惑わされた様に 甘い匂いの貴方に惑わされて
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